着物のたたみ方は、広い袖と長い身頃にできるだけしわを寄せないために整えられてきた手順です。洋服を半分に折る、あるいは現代のジャケットのように吊るして保管するのとは、考え方からして異なります。
この手順を覚えておくと、保管のあいだ絹を守り、次に袖を通すときまで整った形を保てます。平らで長方形という着物の仕立てに合わせて、長い時間をかけて洗練されてきた方法です。
このガイドでは、着物を吊るさずにたたむ理由、必要な道具、手順、やりがちな失敗、そしてたたみ方と長期保管のつながりまでを順に解説します。
この記事のポイント
- 着物は吊るす前提で作られていません:直線の縫い目と長方形の身頃という仕立ては、ハンガーの曲線ではなく平らにたたむことを想定しています。
- たたむ順序には意味があります:先に身頃を折り、そのあとで袖を内側に重ねることで、あの平らな長方形にまとまります。
- 清潔で平らな場所は技術と同じくらい大切です:物が置かれた場所や凹凸のある面でたたむと、避けたいはずの折り跡がついてしまいます。
- 急いで折り目を強くつけると跡が残ります:生地の落ち方に沿ってやさしく折るほうが、絹も繊細な刺繍もよく守れます。
- 正しくたたむことが保管の第一歩です:たたんだあとは通気性のある包みと、湿気と光を避けた置き場所が必要になります。
なぜ吊るさずにたたむのか
着物の仕立ては、曲線の縫い目や肩の丸みではなく、直線の縫い目と長方形の身頃で成り立っています。ハンガーが支えることを前提とした洋服とは、そもそもの設計思想が違います。長く吊るしたままにすると直線の縫い目が引かれて狂い、ハンガーの当たる一点に負担が集まります。平らにたためば、重みが折り畳んだ長さ全体に分散します。
この習慣は、着物が実際にどう保管されてきたかとも重なります。たたんだ衣を納めるために作られた浅い引き出し、箪笥です。たたみ上がりの長方形は箪笥の寸法にちょうど収まり、たたみ方と収納の道具が一つの体系として育ってきたことがわかります。同じ直線裁ちの考え方が他の和装にどう広がっているかは、羽織と着物を比べたガイドで扱っています。
必要な道具と場所
必要な道具は驚くほど少なく、まずは広く清潔で平らな面です。机でも寝台でも、伝統的には畳の上でもかまいません。着物の全体を広げきれるだけの余裕があることが条件になります。あわせて中性紙を数枚用意し、袖の中や主な折り目に挟むと、生地の当たりがやわらぎ、長い保管で折り目が固定されるのを防げます。
見落とされがちですが、手が清潔で乾いていることも同じくらい大切です。手の脂や塗り残したクリームは繊細な絹に移ります。この作業は生地に直接触れる時間が長いので、小さな用心が効いてきます。
手順 ― 本畳みのたたみ方
清潔な面に着物を裏返して平らに広げ、身頃と両袖をなでるように整えて、ねじれや寄りが残らないようにします。片側の身頃を既存の縫い目に沿って内側に折り、その側の袖を身頃の上に重ねます。反対側も同じように折ると、身頃の幅とほぼ同じ、細長い長方形になります。
次に裾を衿のほうへ折り上げ、目安として着物の丈の半ばまで持ってきます。そのうえで上半分を下ろして合わせると、本畳み特有の平らな長方形にまとまります。どの折りも、新しい折り線を勝手に作るのではなく、もとの縫い目と生地の落ち方に沿わせてください。伝統的な形が保たれるだけでなく、繊細な生地や刺繍に長く残る折り跡の危険をはっきりと減らせます。
主な折り目ごとに中性紙を一枚挟んでおくと、折れる位置で生地に当たりがつかず、生地同士が何か月も押し合って生じる、固まった折り跡を抑えられます。たたんだ着物とあわせて他の和装をしまうときの考え方は、ジャケットの保管ガイドでも扱っています。
やりがちな失敗
縫い目ではなく好きな位置で折ってしまうのは、最もよくある失敗です。仕立てが想定していない折り線が入るため、時間が経つほど目立ち、戻しにくい跡になります。物が置かれた場所や狭すぎる面で急ぐのも同じで、着物は折り始める前に丈を全部広げておく必要があります。寄ったまま折れば、仕上がりは必ず歪みます。
折るたびに強く押さえて鋭い折り目をつけるのも避けたいところです。生地の落ち方に沿ったやわらかい折りのほうが、繊細な絹や刺繍をよく守ります。意図して押し込んだ折り目は、折り線に沿って繊維に負担をかけ続けます。とくに絹や刺繍の多い一着で紙を挟まずにたたむと、長く置いたときに折り跡が出る危険が上がります。
たたみ方と長期保管
正しくたためても、置き場所が整っていなければ状態は保てません。通気性のある包み、伝統的には風呂敷で包むと、埃を防ぎながら空気を通せます。密閉した袋は湿気を閉じ込め、カビを招きます。涼しく乾いた暗いところに、直射日光と大きな湿度の変化を避けて置くことで、生地の色も刺繍の糸も、褪せや繊維の傷みから守られます。
保管中の着物は数か月に一度たたみ直してください。一年以上そのままにするより、折る位置を少しずつ変えるほうが、生地にかかる負担が全体へ均等に分かれます。通気性のある包みと組み合わせれば、年単位、そしてしばしば世代を越えて良い状態を保てます。
着物とともに使う帯も、まとめて脇に押し込むのではなく、同じ丁寧さでたたみたいものです。帯は織りが硬く、刺繍や錦織の重い装飾が入ることも多いため、帯には帯のためのやわらかい手順があります。この一本の手入れと意味については、帯のガイドで詳しく扱っています。
何枚かをまとめてしまう場合は、一枚ずつ薄紙で包んでください。生地同士が直接触れると擦れが増え、染料が移る危険が出てきます。重ねるあいだに薄紙や晒を一枚挟むと、引き出しのかさは少し増えますが、それぞれの一着を確実に守れます。
まとめ
本畳みは、細かすぎる作法ではありません。直線裁ちで平らに仕立てられた衣が、実際に必要としている折り方です。だからこそ、袖を通さないあいだも絹と刺繍が良い状態で保たれます。Sukaizenでは、仕立てと手入れに同じ目を向けた刺繍の一着をご用意しています。









